インタビュー

AI で、人のための時間を取り戻す

Dify 日本法人副社長とエンジニアが語る、現場主役のDXと京進との協創

「先生の本来の仕事って、なんだろう。」
生徒と向き合う時間のはずが、報告書の作成、保護者への連絡、教室の清掃……気づけば一日の大半が、「授業以外」の業務に費やされている。

これは塾や学校だけの話ではありません。保育園や介護の現場でも、英会話教室でも日本語学校でも、「人のためのサービス業」が抱える構造的な課題として、長い間ずっと、現場を疲弊させ続けてきました。

そんな現状を変えようとしている人たちがいます。

生成AIの活用プラットフォーム「Dify」を展開する株式会社LangGeniusと、京進グループが進めるDX推進専門組織「Kyoshin Digital Academy(KDA)」。

今回のインタビューでは、株式会社LangGenius日本法人副社長の田口様とエンジニアの橋本様に、創業の思いから京進との協創の軌跡、そして「ステキな大人」とは何かまで、率直に語っていただきました。

デジタルに興味はあるけれど、自分に何ができるかまだ分からない。でも、現場の課題を変えたいという気持ちだけは本物だ──そんなあなたに、ぜひ読んでほしい一篇です。

「まずは触ってみる」──挑戦を奨励する、Difyという組織の文化

LangGeniusとはどのような会社で、どういう想いから生まれたのですか?

弊社は、生成AIを効果的に活用するためのアプリケーション開発プラットフォーム「Dify」を開発・提供している会社です。

本体はアメリカにあり、設立から3年ほどの比較的若い会社ですが、AI分野自体がこれからの領域であり、業界全体として新しい企業が多い時代でもあります。日本法人は2025年2月に立ち上がりました。

Difyは誕生して数ヶ月目という早い段階で、GitHubにオープンソースとして公開しました。「世の中のあらゆる業務に生成AIを組み込めるワークフローを構築し、誰でも使える環境を広げていきたい」という強い想いが、その原動力でした。LangGeniusとはどのような会社で、どういう想いから生まれたのですか?

会社として大切にしている価値観や文化を教えてください。

一言で言えば、「まずは新しいものを実際に触ってみる」という姿勢です。AI分野は進化が非常に早く、新しいプロダクトが次々と登場します。情報をキャッチアップし続けること、そして実感を伴った提案力を磨くことが、この業界で生き残る上で欠かせません。

また、スタートアップとして「これをやりたい」「あれに挑戦してみたい」と手を挙げられる、風通しの良い組織文化を大切にしています。挑戦した結果を客観的に振り返り、次に活かす。そのサイクルを回し続けられる人たちが集まっていることが、弊社の強みだと思っています。

AI分野は情報更新のスピードが速いとのことですが、情報のキャッチアップや共有はどうしているのですか?

共有するアプリケーションなどの仕組みは整えていますが、見るかどうかはひとりひとりの自発性に委ねています。

「このアプリ、面白そうだから触ってみよう」という感覚を大事にしたいんです。強制しても頭には入りませんから。自発的に学べる環境をデザインすることが、マネジメントの役割だと考えています。

変化を「面白い」と思えるかどうか。それが、この業界で働く上での一番の資質かもしれません。

現場の「お宝」を掘り起こせ──教育・介護DXに、Difyと京進が本気で挑む理由

京進が取り組むDXの課題感について、どう受け止めていますか?

塾や学校などのサービス業は構造的に、製造業のように大量生産で生産性を爆発的に高めることが難しい「労働集約型」のモデルです。

先生の本質的な業務は「生徒に教えること」のはずですが、実際にはバックオフィス業務──報告書の作成、保護者への連絡、教室の清掃など──に多くの時間が奪われています。
同様に、介護の現場でも記録業務や連絡調整に追われ、「人と向き合う時間」が削られ続けているのが現実です。

教育業界のこの課題へのAI活用は、Difyとしても非常に力を入れたい領域です。

教育現場でのAI活用に、どんな可能性を感じていますか?

現場で先生と生徒・保護者の間に生まれる対話や気づきは、その場で消費されて終わる「価値のあるお宝」だと思っています。

これまでは記録に残らず、失われ続けていた。しかし、AIを活用することでその知見をデータとして蓄積し、全社で共有できる「連携基盤」に変えることができます。それこそがサービス業のDXが目指すべき本質ではないでしょうか。

面談評価や進路指導の場面でのDify活用事例など、京進様と一緒に、教育業界全体に「こんな使い方ができるんだ」という気づきを広めていきたいと考えています。

「誰でも使えるプラットフォーム」を目指す上で、今後の開発の方向性は?

現状、Difyは「誰でも開発できる」とはいえ、まだ一定の慣れやスキルが必要です。今後は自然言語で「こんなワークフローを作りたい」と入力するだけで、初心者でもシステムが自動構築できる機能を開発中です。「圧倒的な使いやすさ」と「企業が安心して使えるセキュリティ・信頼性」を両立させることが、これからの大きな軸になります。

また、セキュリティ強化については体制を刷新し、前半は安定性の確保、後半は機能アップデートという企業の運用サイクルに合わせた長期サポート体制も整えました。「AIは怖い」を「AIは頼れる」に変えていくための取り組みです。

「現場主役」という共通言語──Difyと京進が共に歩んできた6ヶ月

京進との出会いを振り返っていただいて、当時どのような印象を持ちましたか?

最初は、京進様からホームページの問い合わせフォームにご連絡をいただいたのがきっかけです。

最初の打ち合わせで強く感じたのは、「現場主体のDX」という思いが完全に一致しているということでした。デジタルで効率化を進めながらも、根底に「人中心のビジョン」がある。それが弊社の思いと強くマッチしていたため、「ぜひ積極的に伴走させていただきたい」とお伝えしました。

具体的には進めてきた取り組みを紹介いただけますか?

大きくは2つです。

1つ目は、「面談・評価の質の向上」に向けたAI活用です。まずは先生が行う面談の内容をAIが自動的に記録・保存する仕組みの構築を一緒にお手伝いさせていただきました。単に議事録としてまとめるだけでなく、生徒のやる気を引き出している良い面談から、そのエッセンスを引き出して暗黙知を形式知、実践知へと変えていきたいとお聞きしてます。

この仕組みは、学校の三者面談など、教育現場全体にそのまま応用できるポテンシャルを持っていると感じています。

2つ目は、「社内マニュアルのAI自動応答(RAG:検索拡張生成)」です。組織に点在する膨大な知見をDify上で集約し、誰でも素早く引き出せる仕組みを整えています。

ワークショップでは、最初は「使う人は音声録音やAI評価に抵抗があるのでは」と言っていたメンバーが、実際に触ってみることで一気に理解が深まり、最後は「これなら活用できる」と笑顔になっていました。「触れる環境」を提供することの大切さを、改めて実感しました。

京進という組織の今の印象を、率直に教えてください。

「人を非常に大切にしている企業」という印象が極めて強いです。

DXを推進する目的が常に「現場の従業員がより楽に、より成長できるように」に置かれている。多くの企業では現場からアイデアが上がってこないことが多いのですが、京進様との打ち合わせでは現場の皆さんから「こんなことを実現したい」という具体的なアイデアが次々と飛び出してきます。

それが本当に印象的で、伴走していて純粋に楽しいんです。

「スキル」より先に「姿勢」がある──ステキな大人が集まる場所へ

Difyが求める人材像を教えてください。

決まったプロダクトをそのまま売るだけではなく、「AIという領域に対して、Difyの価値をどのように高めていくか」を自分ごととして考えて動ける人が集まっています。

スキルよりも先に大切なのは、変化を面白いと思えるかどうか。技術の更新が激しい環境に身を置いているため、「変化は怖い」ではなく「変化は楽しい」に変換できる人でないと難しいと感じます。

京進グループは「ステキな大人が増える未来をつくる」というグループビジョンを掲げています。副社長の田口様が考える「ステキな大人」とはどんな人ですか?

今の世の中は、大企業でも中小企業でも「職務の分業化」が進み、「これは私の担当外です」と自分の殻に閉じこもってしまうケースが目立ちます。

でも、少人数で闘うスタートアップでは、営業が技術に踏み込んだり、法務の確認をしたり、領域を限定せずに動く必要があります。

「やったことがないからできない」ではなく、「まずは探求する好奇心を持ってやってみよう」と挑戦できる人。年齢を理由に「AIは分からない」と諦めるのではなく、常に学びに向かって前進する姿勢を持ち続けられる人こそが、私の考える「ステキな大人」の定義です。

共感から始まる、業界変革への招待状

今回のインタビューを通じて、LangGenius社が大切にしているものが見えてきました。

最先端技術への探求心と、チームへの深いリスペクト。「AIは面白い」という好奇心と、「分からないことを素直に言える」という誠実さ。その姿勢は、京進グループが大切にする「人を大切にする」という価値観と、根っこのところで深くつながっています。

京進がDXに取り組む理由は、単なる効率化のためではありません。先生が生徒と向き合う時間を増やすため。介護士が利用者さんに寄り添う時間を守るため。「デジタルのチカラ」はあくまでも人を支える手段であり、京進のDX推進もまた「人を大切にする」「学びを大切にする」姿勢を軸に、パートナー企業と共に教育・介護DXの未来へ挑み続けます。

担当外だからと立ち止まらず飛び込める人。分からないことを素直に認め、「分かろうとする」姿勢を持ち続ける人。京進グループは、そんな仲間と一緒に未来を創りたいと思っています。