インタビュー
「ひとりひとりを大切に」とデジタルの融合
DXで進化する京進の教育
コロナ禍をきっかけに、公教育でもGIGAスクール構想などデジタル活用が加速しました。しかし、教育の現場ではツールを導入しても使いこなせない、効率化と引き換えに対面指導の良さが失われるのではないか、という葛藤も生まれています。
教育への熱い情熱があるからこそ、アナログな事務作業に追われ、本来向き合うべき「ひとりひとり」の生徒との時間が削られてしまう。そんな業界共通の課題に、京進グループはデジタル活用で挑んでいます。その象徴が、生徒の学習状況を見守る学習管理システム(LMS)『京進Study』の導入です。
デジタルで、指導の質は本当に上がるのか。現場の不安をいかに解消し、データ活用による科学的な指導へと結びつけたのか。京進学習塾部門の根幹を担う教務部長に、DXが切り拓く教育の未来とその想いを聞きました。
指導現場にデジタルが融合する。—京進が貫く生徒本位の価値観
教務部が大切にしている京進の風土について教えてください。
学習塾部門には、創業以来培ってきた「ひとりひとりを大切に」という文化が深く根付いています。これは私たちにとって誇るべき財産です。そのため、デジタルを取り入れ始めた当初は、現場に戸惑いや不安もありました。しかしそれは、職員たちが生徒との対面での絆を大切にしていたからこその葛藤だったと感じています。
不安を解消するために、デジタル化によって生徒と向き合う時間が増えたと実感してもらうことを重視しました。対面での生徒指導の量・質を確保するためのデジタル化であることを理解し、実感してもらうことで、現在ではさらに活用したいという前向きな意見も上がるようになっています。良い循環ができている実感がありますね。
私たちはこれまでも、生成AIなどの最新技術を積極的に取り入れてきました。技術の安全性と教育的価値を十分に検証するためにも、探求心と好奇心を持って挑戦する文化を育て、ステキな大人を育む新しい価値を創っていきたいと思っています。
デジタル化を進める上で、判断の軸としているものは何でしょうか?
常に生徒本位であることです。教務部のメンバーの多くは、現場で生徒と接してきた経験を持っています。生徒や保護者、実際に指導する職員にとって本当に価値があるか、という視点を何よりも重視しています。机上の空論ではなく、現場の生徒の笑顔に直結するかどうかが、私たちの大切な判断基準になっていると思います。
導入の際は、生徒と向き合う職員のサポートにも手厚く取り組みました。職員対象の研修に実際のアプリを利用するなどの工夫もして、実際に生徒が使った感覚を味わってもらうことが導入へのハードルを下げてくれたと感じています。その結果、今はより良い改善のための創意工夫が続いています。

家庭学習の可視化が、生徒と講師を双方向につなぐ
学習管理システム「京進Study」導入の狙いを教えてください。
最大の目的は、これまで知ることのできなかった家庭学習を可視化することでした。塾で生徒と接する時間は限られていますが、家庭で生徒がどう学習に向き合っているかをデジタルの力で捉え、最適なタイミングで適切なアドバイスをしたいと考えました。これまでの宿題は、提出、確認、返却と、どうしても時間のかかる一方通行のやり取りになりがちでした。デジタルを活用することで、今では学習進捗をリアルタイムで把握できるようになりました。
また、デジタル採点の導入は、生徒がその場で正確な結果を知ることができるという大きなメリットを生んでいます。さらに、授業動画の配信により、欠席時のフォローだけでなく、苦手箇所の学び直しなど、これまでの補習以上に質の高い指導ができるようになりました。
デジタルは、教室における双方向のコミュニケーションを深化させる欠かせないツールとなってきています。
「人にしかできないこと」に集中し、教育の質を次のフェーズへ
現場の職員の働き方は、具体的にどう変わるのでしょうか?
採点やデータ入力といった定型業務をデジタルに任せることで、職員の時間にも、心にもゆとりが生まれます。そのゆとりを、生徒への直接的な指導やカウンセリング、そしてひとりひとりに寄り添う創造的な業務にあててもらいたいと思っています。
人にしかできないことに集中できる環境を創ることは、京進が目指すDXの核心です。現場の負担を軽減し、職員自身が物心両面の豊かさを感じられる組織であることが、結果として生徒への最高のサービスに繋がると考えています。
データに基づいた科学的な指導の成果はいかがですか?
蓄積された膨大なデータにより、この時期にどの程度の成績であれば志望校に届くかといった、客観的な根拠に基づく提案が可能になりました。経験や勘だけに頼らない科学的なアプローチは、納得感にもつながっています。
客観的な根拠をもとに、職員がひとりひとりの生徒の性格や志向に合わせた指導を行うことで、データによる冷静な分析と人による温かい励ましが融合します。こうした取り組みにより、学習データを活用しながら、よりひとりひとりに合わせた指導へと進化しています。

信頼と挑戦のパートナーシップ。教務現場とデジタル部門の協創が生む成果
現場とデジタル部門との連携はうまくいきましたか?
非常にうまくいっていると思っています。教務指導における企画力とデジタル部門の技術力が、互いをリスペクトし合う協創の関係を築けている実感があります。
IT部門が技術を押し付けるのでもなく、現場が仕様を丸投げするのでもない。同じ目標に向かうパートナーとして、様々なツールも活用しながら、タスクの優先順位や目的を常に共有しています。このDX推進の連携基盤が強固であることは、京進の強みかもしれません。
京進が掲げるビジョン「ステキな大人」を増やすために
最後に、教務部長が考える「ステキな大人」とはどのような存在でしょうか?
私が考える「ステキな大人」は、「見えないところでの他者の苦労に気づける人」です。背景にある企画・開発者の想いやプロセスを理解し、感謝できる。実際にシステムを使う人の立場に立って想像し、改善提案ができる。そんな心の豊かさを持った人と、デジタルのチカラを使って、より良い社会を創っていきたいと願っています。

伝統と探求する好奇心が拓く、京進グループの新しい景色
今回のインタビューを通じて、教務現場にある生徒への深い愛情と、それを守り抜くためにデジタル化へ挑む真摯な覚悟を改めて確認することができました。伝統を大切にする一方で、探求心を忘れず新しい技術を柔軟に取り入れる姿勢は、京進グループが未来へ前進するための大切な原動力です。
京進のDXは、決して効率化だけで人を置き去りにすることはありません。むしろ、ITやAIのチカラで徹底的に業務を支えることで、「人にしかできないこと」——ひとりひとりに寄り添う人間的なコミュニケーションや、心のこもったケアに集中できる環境を創り出すことが目的です。
デジタルという手段を介して、「人を大切にする」「学びを大切にする」という私たちの価値観を、より純粋に、より広く社会へ届けていきたいと考えています。
私たちはこれからも、この想いに共感していただけるパートナー企業や新たな仲間と共に、教育・保育・介護の現場にポジティブな変革を起こし、ひとりひとりの未来を支え続けます。